現在までの毛髪科学の成果と限界、そして課題が一望できる好著。
岩波書店のイメージ通り、素人にはやや専門的なところもありますが、
良くある育毛ハウツー本とは一線を画す真摯な科学書です(もちろん
薄毛の人間にとっては効果のある指導書の方が大事とも言えますが。しかしこうした
基礎研究無しには薄毛の根本的解決は実現できません)。
本書の大部分は、多くの育毛関連の書籍でどちらかというと簡単に触れられている、
毛髪そのものや発毛のメカニズムについて書かれています。著者によれば
これでも単純化して書いているそうですが、普段我々が抜けた生えたと一喜一憂している
毛の奥の深さと複雑さには驚かされます。当然聞き慣れない専門用語も沢山出てきますが、
充分素人にも理解できる範囲ですし、読み進めるうちに自然と、現在の科学の限界と
「あっ、もうすぐなんとかなりそうじゃん」という希望を抱かされる内容になっています。
あとがきで著者は、これまで毛髪の科学がなかなか進展しない理由の一つとして、
「死に直結する病気でないため研究が後回しにされてきた」「研究者の数もガンの研究者数から
見れば数百分の一にすぎません」と述べています。しかしそうした状況も変わりつつあるようです。
「希望はあります。まず研究者の数がどんどん増えています。それにともない、研究の対象や
テーマも広がっています。研究方法にも期待がもてます」と語り、いくつかの実例を挙げています。
読み終わって、これからの毛髪科学・育毛の科学の進歩が楽しみになりました(できれば5年くらいの内に
画期的な進展をお願いします)。
最後に著者は理学博士で、現在 島根大学生物資料科学部講師。1962年の生まれで、私とほとんど同じ位の
年齢という若さ?に、さらに明るいものを感じました。