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育毛トピックニュース
■2週間で毛ふさふさ マウスで成功、遺伝子治療に期待
(朝日新聞)
ワシントン発6日
人体組織の発達を促すたんぱく質の遺伝子を、毛をそったマウスの皮膚に注射し、
わずか2週間でふさふさした毛を生やすのに成功したと、米コーネル大のロナルド・クリスタル博士らが
米医学専門誌に発表した。壮年性脱毛症の遺伝子治療につながる成果と期待されている。
博士らは、胎児の段階で作用し、毛包などの組織を発達させるたんぱく質の遺伝子「Shh」に注目。
壮年性脱毛症は毛包組織が”休眠状態”になって起こると考えられることから、同遺伝子で
毛包を再活性化する治療を試みた。アデノウイルスに同遺伝子を組み込んで、体の毛をそった
マウスの皮膚に注射。マウスは注射をした部分だけ2週間でふさふさした毛が生えた。
(10月7日朝日新聞 夕刊より)
※注
遺伝子「shh」=ソニックヘッジホッグ(Sonic hedgehog)
「ソニックヘッジホッグは分泌性のタンパク質で、神経ができるときや手足が作られるときにも
はたらいています。毛包形成における役割はまだはっきりしませんが、ほかの組織での
機能から考えると、細胞がほかの種類の細胞に変わるきっかけを作っているようです。
ソニックヘッジホッグはまた、種々の増殖因子やその受容体(リセプター)を活性化します。
その結果、毛芽が成長しはじめるとともに真皮集塊の形成が促進されます。」
「毛髪を科学する」 松崎貴著より

※ニューヨークタイムズに詳しい記事がありましたので、長くなりますが
当サイトで独自に翻訳したものをご紹介します。
「遺伝子治療でマウスに毛が生えた!」
かつらメーカーに激震走る!? FDA認可の製薬会社だって、あるいは育毛オイル
・メーカーだってうかうかしていられないかもしれない。マイケル・ミルキンをはじ
めとするかつら愛用者らも、「ハゲ」をトレードマークにしている人々も耳をそばだ
てずにはいられないニュースが発表されている。
「育毛」に希望の光を与えるのは、クリームでもなければ化学薬品でもない。それ
は、Sonic hedgehog(ソニックヘッジホッグ)という変わった名前を持つ遺伝子だ。
学者間には既にSHHという頭文字で知られており、様々な話題を提供している。SHHと
は、言うなれば人体の彫刻家。胎児の発達の段階で作用し、分割、組織形成に関わっ
ているという。SHHに異常が生じると、細胞分割が行われなくなり、一つ目奇形であ
るcycopia(単眠症=オデュッセウスを幽閉、部下を食らったという伝説の一つ目巨
人、キュークロープスにちなんで命名された)を引き起こす怖れがある。
ソニックヘッジホッグは胎児での創造的役割を終えた後、今度は大人の体で退行に関
わると考えられている。つまり、髪が成長サイクルをたどる際、毛胞(毛穴)を「退
行」、「休眠」状態にしてしまう。人は約10万の毛穴を持って生まれるというが、
「ハゲ」になった人の毛穴は死んでしまったわけではなく、ただ休んでいるか、かな
り細い毛がぱらぱらと生えるという状態に陥っているのだ。
そのため、ニューヨーク、コーネル大の遺伝子治療学者であるロナルド・クリスタル
博士らの成功が格別の興味を引くのは当然といえる。The Journal of Clinical
Investigation最新号に掲載されたマウスを使った研究では、休眠状態に陥っている
毛胞にソニックヘッジホッグ遺伝子の影響を与えることで、成長への目をさまさせる
ことに成功した。
人に対する研究はまだだが、ソニックヘッジホッグあるいは関連遺伝子が悲惨な「ハ
ゲ」状態になった頭の眠れる毛胞にカツを入れることに十分な勝算はあるという。
スタンフォード大の皮膚学者、アンソニー・E・オロ博士は「人に対し試してみる価
値は十分あるだろう」と評価している。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校、皮膚学者アービン・エプスタイン博士もこ
の遺伝子治療について「休眠状態をほかより早く活性化させることについては根拠ある手
ごたえを感じる」と述べている。
エプスタイン博士はまた、「美容的な効果は不明だが、同遺伝子は確かに髪の成長を
促す要因の一つになるだろう。私の考えでは、近い将来、育毛での成長因子としてこ
の遺伝子が使われることになる」と付け加えた。
クリスタル博士と彼の同僚であるサトウ・ノボル、フィリップ L レオポルドは、
ソニックヘッジホッグ遺伝子をマウスの
毛胞細胞に挿入するために、風邪ウィルスの一つアデノウィルスを使った。このウィ
ルスは細胞に浸透して細胞が持つ遺伝子を作らせると考えられることから、遺伝子治
療学者の注目を浴びている。研究チームはウィルスをコピーさせる遺伝子を取り除き
ソニックヘッジホッグのコピーを組み込んだ。
毛胞が休眠状態に入っている若いマウスにウィルスを注入、育毛効果を見るために
「クレアロール」のヘアダイでマウスをブロンドに染めた。すると数日後、ウィルス
を注入した部分にマウスの本来の毛色である黒い毛が生えていることが認められた。
毛胞細胞の分析をすると、ソニックヘッジホッグ遺伝子が注入部分だけで活性化して
いることがわかった。
つまり同研究では、遺伝子を注入した細胞が他の休眠状態に入っている毛胞細胞より
先に目を覚ましたことを指摘する。
この治療が人に対し有効性を示すとしても、人の場合頭部全体の何箇所かに注入する
必要があるだろう。他の遺伝子が必要になるにせよ、ソニックヘッジホッグ遺伝子
は、美容的に見て評価できるほどの太い毛を誘発するまでになることが求められる。
だが、次の毛胞サイクルが来るまで注入の必要はない。
成長、退行、休眠という人の毛胞サイクルは、加齢とともに短くなるがざっとみて4
年。若い世代が上の年齢層よりすぐに髪が長くなるというのはそこにわけがある。だ
が、一斉に繰り返すマウスの毛胞周期と違って、人の場合は同時に起こることがない
ため、複雑な治療が必要になってくることもある。
人への臨床研究を実施する前に、片付けなければならない問題はいろいろある。エプ
スタイン博士は、ソニックヘッジホッグ遺伝子の過剰活動が、基底細胞がん(治療可
能な皮膚がん)を引き起こす危険性を指摘している。今回の研究で示されているヘッ
ジホッグ遺伝子の注入量は微少で基底細胞がんの兆候は見られないが、その安全性は
確認されているという。
ただ先月、ペンシルベニア大学で行われた遺伝子治療試験で、多量のアデノウィルス
を投与された被験者が死亡したことから、アデノウィルスに関する論議は起こること
が予測される。だが、クリスタル博士は「ソニックヘッジホッグ遺伝子を組み込む他
のウィルスはいつでも開発できる」とも述べる。
がんやその他の重病治療のために研究・開発される高度技術の遺伝子治療が、たかだ
か美容を主とした目的に使われるのは納得がいかないかもしれない。
クリスタル博士自身は、嚢胞性繊維腫や心臓病を主体に研究する遺伝子治療学者で、
育毛に関する質問には自信がないという。ただ、毛胞というものを生物学的に理解す
るために今回の研究が役立つこと、またがん化学療法の副作用などで脱毛した患者の
育毛に対する実用的効果が期待できる点を強調する。
同博士は原子物理を専門としてきたが、心臓生理学に興味を持ち始め専攻を変えた。
1985年以来、同分野では遺伝子治療のパイオニアとして活躍している。
そもそも毛胞の成長については二次的興味ではあった。アデノウィルスによって体内
に運び込まれた矯正遺伝子が、潜んでいるアデノウィルスを探知した免疫システムに
宿主細胞が破壊される前に活性化する。クリスタル博士は、嚢胞性繊維腫治療にこう
した矯正遺伝子を挿入したが、臨床的に効果が見られるほど十分な時間活性状態にな
かったという。
そこで、アデノウィルスの短い寿命で力を発揮できる強力な遺伝子を探していたとこ
ろ、このソニックヘッジホッグにぶつかったというわけだ。
ある生物学者が、ヤマアラシのような形をしていたフルーツフライにこの遺伝子が欠
損していることに最初に気づいた。哺乳類が持つこのヘッジホッグ遺伝子の一対はす
ぐに見つかり、セガのゲームソフト、ソニック・ザ・ヘッジホッグの名前を取って、
ソニックと名づけられた。
ソニックヘッジホッグ遺伝子の特許は他が持っているが、コーネル大は脱毛治療もカ
バーする使用特許を申請している。
(ニューヨークタイムズ 1999年10月5日 ニコラス・ウェイド)
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